今田美桜、松下洸平らの名演を振り返る
同時に、俳優陣にも称賛を贈りたい。
個人的にまず名前を挙げたいのは、容姿に恵まれているがゆえに上手く人間関係を築けなくなってしまった夜々を、リアリティを持って存在させた今田美桜。
観ている側に「そうは言っても自分がかわいいって思ってるんでしょ」と思わせてしまったら終わりとなってしまいそうなところを、まったく嫌味なく演じ切った。
相良やナンパ男に絡まれているときの愛想笑いと心底楽しそうに笑っているときのメリハリ、母との確執で涙ながらに想いの丈をぶつける姿が目に焼き付いている。
涙の演技といえば、松下洸平も忘れてはならない。純恋と婚約破棄が決まり、改めて話し合いをしていた際の涙。第3話のレビューでも書いたが、子どもの頃の自分自身が乗り移ったような泣き方、涙の拭い方が忘れられない。
最終話でも引っ越しを終えて家を後にするときに目に涙が溜まっていたように見え、椿はいまどんな思いでいるのだろうかと考えさせられた。気付きを与える、潤んだ瞳だった。
そもそも、現実世界ではなかなかお目にかかれなさそうなあそこまでのお人好しに謎の現実味があったのも、松下だからなせる業だ。演技が達者な俳優はほかにもいるが、ほかの俳優が演じている絵が浮かばない、と思えるところがすごい。
名作ドラマ「silent」チームが再集結するドラマとあって、期待値が爆上がりした「いちばんすきな花」。わかりやすい感動や派手な恋愛の要素はなかったものの、共感できる人にとっては染み渡る作品に仕上がった。
これは“みんな”ではなく、“わたし”に向けられた作品だ。ちょっと疲れたときや立ち止まりたくなったとき、赤い屋根のあの家を思い出して、深呼吸をしたいと思う。
(文・あまのさき)
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