「人間に1番必要な能力は社交性」は本当か?
ゆくえの母・みきこ(神野三鈴)は、「人間に1番必要な能力は社交性」だと言ったが、嫌われないように配慮することや、その場のノリにあわせることは社交性といえるだろうか。
配慮していた側のほうが、気づくと淘汰されていたなんてこともある。「このメンバーが1番落ち着く」と言われながら、たった1人結婚式に呼ばれなかったゆくえのように。
そもそも配慮したりノリを合わせたりするには、まず相手の気持ちをわかる必要がある。でもゆくえは“みんなと同じ気持ちになれないこと”を辛いと感じていた。そしてそれを、2度目はないと思われた椿の家での4人の集まりで吐露する。
昔観に行ったちびっ子相撲大会。明らかに大柄な子が、あまりの体格差に戦意すら喪失していた小さな子を相手に負けを喫した。周囲はどんでん返しに感動していたが、ゆくえは大柄な子が感じているのが純粋な悔しさだろうか、そこに恥ずかしさは含まれていないだろうかということが気になったと話す。
それを聞いた椿は「同じものを見て、みんな同じ気持ちになったら気持ち悪いですよ」と優しく微笑んだ。「言っちゃダメなことはあるけど、思っちゃダメなことはない」と。
松下洸平の穏やかな声も相まって、この言葉はゆくえと夜々の、そして視聴者の心にもじんわりと沁みたはずだ。自分だけが周りと同じことを思えないと孤独を感じる必要なんかない。“自分の感情だけがいつも1人”なんてこともない。
現に、椿の家からの帰り道、夜々もまたゆくえの話を聞いて試合に負けた子の心を慮っていたという。誰かと同じ気持ちにならなくてもいいけれど、ゆくえと同じ気持ちになる人が、たしかにいるという事実。