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血がつながっている家族同士であっても別の人間

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』第1話 ©NHK
『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』第1話 ©NHK

 さて、この仰天エピソード過多な物語を見届けた際に、ひとつ感じたことがある。「家族はひとりひとりの人間がつどった集合体にすぎない」ということだ。例えば、母親がマルチ商法に洗脳された天ヶ瀬こと通称“マルチ”(福地桃子)という七実のクラスメイトがいる。一本1,280円(税抜)の“サクセスウォーター”なる2リットルのペットボトルをいつも携えており、その有り難みを感じることなく、ただの水としてグビグビ飲む。

 しかし、母親が一方的に勧誘電話をかけているせいで、クラスメイトに後ろめたさを感じているのだ。そんな彼女の母親が作中に出てくることはない。つまり、マルチの母親がどんな人かはマルチの発言から汲み取るしかないのだが、血のつながった“母”と“娘”でありながら、それぞれ別の人間であることを示した最たる例だと思う。

 第1話では、クラスの一軍女子がマルチの陰口を叩くシーンがあった。親がヤバいから天ヶ瀬もヤバいんじゃないかとヒソヒソ呟く彼女たちに「なんで家族がマルチしとるからってマルチまでマルチやねん」「どんな家族かで私らの性格まで決まるん?」と七実は啖呵を切る。

 もちろんマルチのためを思っての発言ではあるのだが、きょうだい児である自分のことも言われたように感じて、黙っていられなくなったのだ。ダウン症の弟と自分は他人であることを、七実はキラキラ女子たちに、ひいては世の中のマジョリティーたちに訴えかけているのである。

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