「もうさ、一緒に死のか」絶望的な展開に泣きながらも希望をもらえるワケ。 NHKドラマ『かぞかぞ』第2話考察レビュー
text by 明日菜子
河合優実主演のNHKドラマ『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』が地上波にて放送中。岸田奈美のエッセイを元にした本作は、2023年にNHKBSプレミアム・ NHKBS4Kで放送され大反響を呼んだ。今回は、第2話のレビューをお届け。(文・ 明日菜子)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】
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【著者プロフィール:明日菜子】
視聴ドラマは毎クール25本以上のドラマウォッチャー。文春オンライン、Real Sound、マイナビウーマンなどに寄稿。映画ナタリーの座談会企画にも参加。
この絶望もその先の笑顔も正真正銘のトゥルーストーリー
「いつのまにか大きくなって、いつのまにか私は娘を見上げている」
ジュースを持って帰ってきたダウン症の草太(吉田葵)が、万引きしたんじゃないかとあわあわした第1話が、もはや懐かしく感じてしまった。
女手一つで家族を支えてきた母・ひとみ(坂井真紀)が、大動脈解離で倒れたのである。生涯車椅子ユーザーになったひとみが見る世界は、世の中の人たちの目線よりずっと低く、視界もずっと狭くなっていた。嬉しいときも、悲しいときも、岸本家をひとしく照らす、大九明子監督の鮮やかな画面作りが印象的だ。
「トゥルーストーリー、ほぼ」という七実(河合優実)の宣言通り、『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(以下:『かぞかぞ』)のエピソードは、原作者・岸田奈美の実体験をベースにしている。
母の生死をかけた手術の同意書に高校生の七実が震える手でサインをしたことも、もちろん実話。目まぐるしい岸本家の物語が大きく動いたきっかけは、父・耕助(錦戸亮)の急逝、そして母・ひとみを襲った不治の病である。
手術は奇跡的に成功するものの、命と引き換えに残った下半身麻痺という後遺症は、ひとみから生きるための気力も尊厳も奪っていく。「もう死にたいです」と看護師に泣きながら打ち明ける姿を見て、自らの選択が母に死ぬより辛い思いをさせてしまっているのではないかと、七実は自責の念に駆られていた。