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当たり前の存在だからこそ、変わってしまった現実を受け入れられない

『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』第2話 ©NHK
『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』第2話 ©NHK

 一番大変な母を支えなければいけないことは分かっているものの、つい自分の気持ちをぶつけてしまう七実の10代特有のアップダウンに、痛いほど心当たりがある。いや、自分が子どもである限り、親にはそういう態度を取ってしまうものなのかもしれない。

 そもそも「家族はどこか不変的な存在である」と思ってしまうのは、七実だけではないだろう。いつも元気で優しくて笑顔だった母の弱った姿は直視しがたい。いつまでも変わらないままでいてくれると思っていたからこそ、当たり前の存在だからこそ、変わってしまった現実を受け入れられない。それはきっとどれだけ年を重ねても同じで、駆けつけた祖母・芳子(美保純)も、ひとみの見舞いになかなか腰が上がらずにいた。

 さらに、高校生の七実は絶賛進路に迷い中。家族のためにコツコツ積み重ねてきた母の努力がひっくり返される姿を目の当たりにしたことで、七実は願っても思い通りにならない世の不条理さに脱力する。増えていくのは日頃の空虚さを詰め込んだ風船だけだ。

 河合優実と坂井真紀の見事な掛け合いで展開される『かぞかぞ』第2話の主軸は、娘と母の物語であり、どこを切り取ってもハイライトになり得る。なかでも印象的なのは、一時外出許可が出た日に、七実とひとみが2人きりで出かけるシーンだ。

 目的はひとみが好きそうなカフェでお茶をすること。母に元気を出してほしい七実、我慢ばかりさせていた娘の願いを叶えてあげたいひとみ。母娘の想いは交差するものの、改めて厳しい現実を突きつけられることになる。

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