「ママにしてあげな」
その想いが母のプライドを傷つけていた?
首藤との出会いは、沖縄帰りの無気力生活を終わらせただけでなく、母との関わり方を改めて考えるきっかけにもなった。
「なんでそんな頑張るん?」
「え、母を喜ばせるためです」
「お母さんの喜びは岸本さんが頑張ることなん?」
首藤は答えを反復しただけなのだが、なんとも不思議なことに、七実は言葉に詰まってしまう。「ぎくっ」という効果音が今にも聞こえそうな表情を見る限り、がむしゃらに頑張ることが、母の喜びに直結していないことは薄々分かっていたのだろう。
じゃあ、母に何をしてあげられるのか。七実は再び悩み始めるのだが、そこを導いてくれたのも首藤の“当事者目線ならでは”の言葉。「ママにしてあげな」ずっと胸にあったその想いが、母のプライドを傷つけていたかもしれないということに、七実は初めて気づくのだ。
そして、俯いていたひとみを前に向かせてくれたのは、他でもない草太(吉田葵)である。第1話を振り返ると、最初に描かれたのは“姉”とダウン症である“弟”の物語だ。実際には他にも語りきれない苦労や大変さがあっただろう。
だが、原作者・岸田奈美のまなざしを通して綴られた弟のエピソードは、どれも豊かで愛にあふれている。障がいを抱える弟の物語は、決して悲しいものではないのだ。