監督が語る『アンメット』が“特別なドラマ”になったワケ。Yuki Saitoインタビュー(4)緊張感ある手術シーンの秘密
月10ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)が6月24日(月)に最終回を迎える。今回は、本作のチーフ演出を務めるYuki Saito監督にインタビューを敢行。杉咲花・若葉竜也への印象や細部にわたる演出、本作に込めた思いなどたっぷりとお話を伺った。(取材・文:あさかしき)
「あれを見ていなかったら演出がガラッと変わっていた」
実際の手術を見学したことによるリアリティ
―――5話ではモヤモヤ病患者の手術シーンにおける無音の演出が印象的でした。手術シーンはどのようにして作り上げていきましたか?
「手術シーンはみんなやるべきことが沢山あるので特に緊張感があります。米田プロデューサーも他媒体のインタビューでおっしゃっていましたが、医療監修の石川先生のもとで吻合(ふんごう。本来分離されている2つの臓器や内腔を互いに連絡すること)の練習をしていた時に、ちょうど手術が行われていまして。僕、杉咲さん、若葉くんの3人で見学させていただいたことがあったんです。
手術シーンといえば、既存の医療ドラマで描かれているような重苦しい雰囲気を想像していたのですが、実際には、意外にもリラックスした雰囲気で、日常の話をしていたのが印象的で。話の内容といえば、『台湾ラーメンが美味しい』とかそんな他愛のないことを話していたんですよ(笑)。でも、撮影、造影のタイミングになるとその場にいる全員のムードがスッと切り替わって。いざ手術が始まったら、ピリッと緊張感が張り詰めるんです。でも、ドラマみたいに『メス! 』って声を張るというよりは、淡々と進める感じで」
―――今までの医療ドラマが描いてきたステレオタイプなイメージが崩されたのですね。
「顕微鏡の位置を変えるときも『回るよー』とだけ言って、スッと静かになる。で、患部を見ながら、『ここどうだろう。ここから行く?』みたいな会話を淡々としている。本物を見せてもらってまさに目から鱗でした。
あと印象的だったのが、それを見た若葉くんが『なんか俺たちみたいっすね』と言ったこと。言われてみるとたしかに、セッティング中はリラックスしていて、本番になるとその場にいる全員が神経を研ぎ澄ませて一点集中する。撮影現場のあり方とよく似ているなと思いますね」
―――『アンメット』における手術シーンのリアリティは、実際の手術現場に立ち会ったことで生まれたのですね。ちなみに台湾ラーメンのお話を聞いて、野呂佳代さん演じる成増がオペ室で餃子の話をするシーンを連想しました。
「実際の手術現場を見ていなかったら演出はガラッと変わっていたかもしれません。観ている人にまるで手術室にいるかのような緊張感を味わってほしいと考えた時に、抑えた演出の方がより説得力を持つと信じて演出をしました。ちなみに、最終話の手術シーンは、これまでの集大成といえるものになっているので、是非注目していただきたいです」
(取材・文:あさかしき)
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