『アンメット』あいみょんの主題歌に込められた意味とは? Yuki Saito監督が語る“特別なドラマ”になったワケ(5)
月10ドラマ『アンメット ある脳外科医の日記』(カンテレ・フジテレビ系)が6月24日(月)に最終回を迎える。今回は、本作のチーフ演出を務めるYuki Saito監督にインタビューを敢行。杉咲花・若葉竜也への印象や細部にわたる演出、本作に込めた思いなどたっぷりとお話を伺った。(取材・文:あさかしき)
「ミヤビの身に起きたことを追体験して欲しかった」第10話の楽曲演出について
―――第10話では、OP曲と主題歌にこれまでと違う演出をされていました。これはYuki監督のアイディアなのでしょうか?
「2番にかけて、倒れるまで主題歌をずっとかけたいという僕の案を編集の矢野さんがブラッシュアップして、選曲の谷口さんが形にしてくれました。僕はドラマを観る時、主題歌が流れるタイミングが一番好きなんです。名ドラマには必ず良い主題歌があって、それが流れると共に気持ちが上がる。そういうドラマを観て育ってきたので、自分が手掛けるドラマもそういうものにしたいという気持ちが根本にあります。
普通、“音打ち”、あるいはMA(整音作業)と言われる、仕上げの段階でシーンに曲がつけられるんですが、僕は、主題歌のタイミングだけは必ずちゃんと指定するということを、今まで監督として携わったどのドラマでも基本的にはやっていて、『アンメット』もそのスタイルでやらせてもらいました」
―――上野大樹さんによるオープニング曲「縫い目」もドラマの内容とすごくマッチしていて、冒頭から作品世界に引き込んでくれます。
「実は上野大樹さんには3回くらい書き直していただいたんですね。粘り強く対応していただいた結果、オープニングにピッタリの曲になりました。
最初に『縫い目』を聴いた時は、主人公のミヤビについての曲だと思っていたんです。だけど、ドラマ後半で、三瓶が顕微鏡で必死に吻合の練習しているシーンを撮っていたら、むしろ三瓶が顕微鏡で見ている景色のようだなと思ったんです。
10話では三瓶が吻合の練習をしているところに曲をかけたいと思ったんですが、歌詞をこれまでより長めにつけたのは選曲の谷口さんがやってくれたこと。僕も音打ちで知って驚き、拍手しました」
―――主題歌「会いに行くのに」は、あいみょんさんの伸びやかな歌声が印象的です。第10話では、ミヤビが昏倒するタイミングに合わせて、音像を変化させていましたね。とても大胆な演出だと思いました。
「このドラマの演出を手掛ける上で、意識していることの1つに、患者さんの体感を視聴者に追体験してもらうことがあります。
例えば1話では、失語症になってしまった患者さんが、周囲の音をどのように聞き取っているのか、なんとかその感覚を表現できないかと、言語聴覚士の方と相談しながら音響を作り上げていきました。勿論、本当のところは当事者の方にしかわからないわけで、答えがあるわけではないのですが、それでも試行錯誤しながら、毎度チャレンジしています。
で、10話のラストシーンについてですが、ミヤビの遠のいていく意識を表現するには、『会いに行くのに』を使うのが一番だろうと。歌詞がすごく寄り添っていてくれる内容だからこそ、聴覚的にそれが歪められたらきっとものすごく怖い。でも、それがミヤビの感覚なんじゃないかなと思ったんです。
ポイントは、ミヤビが倒れる直前までは、彼女の感覚を味わってもらって、倒れた後は三瓶と星前の視点に移るので、曲の響きを戻すことで、観ている人の感覚もスッと日常に戻るように表現しています」
―――シーンに合わせて主題歌にアレンジを加えるという演出は他のドラマではあまり見られないものです。
「イレギュラーですね。あいみょんさんサイドがどう思うのか…という不安もあったのですが、快くOKしてくださり、とても感謝しています。
個人的には、『会いに行くのに』が10話かけて『アンメット』の主題歌として、視聴者の方にしっかり認識されていたからこそ、あの演出が効いたのだと思います。これも映画ではできない演出です。こういうところにも連続ドラマの面白さがあると思っています」
(取材・文:あさかしき)
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