恋の切なさも不器用さも体現してくれた朝日
そして、朝日は恋の切なさを体現していた。職場では誰にでも優しい“ブランケット男子”なんて言われて女性陣から褒めちぎられているけれど、本当の朝日はそんなに器用なタイプじゃない。
まことが落としたハンカチを拾ったときには、そのまま返してあげればいいのに、職場で話しかけたら迷惑かな? と思ってしまう。相手のことを考えすぎるあまりに、ストーカーと勘違いされてしまうなんて。どれだけ不憫なのか…。
ただ、正直なところ、何者か分からない人がポストのなかにハンカチを入れてきたら、当たり前に怖いわけで、それを「あんなに怖がらせていたなんて」と言ってしまうあたり、想像力が足りないようにも思えるが、不器用すぎて空回りしてしまった点は、朝日らしい。
また、いちばん苦しかったのは、一緒にカップ麺を食べたことをまことが覚えていなかったとき、朝日が言った「それ、思い出せないんじゃなくて、最初から覚えてないんだよ」という台詞。
まこととカップ麺を食べた思い出は、朝日のなかではすごく特別で、いつまでも色褪せない記憶だった。でも、まことにとっては時が経てば消えてしまうような平凡な記憶だから、まったく覚えていない。このシーンには、恋の切なさがぎゅっと集結されているように感じた。