密子は天使？それとも悪魔？

　物腰柔らかな密子は、最初こそ夏を救う救世主かに思われた。ところが、役員たちの票を割らせるために、夏に近づく前から九条開発の専務・荻野目（石井正則）の家庭状況について調べを付けていたことが後半で明らかになるなど、なかなかに底が知れない。福原の柔和な笑顔と、ゆったりとした喋り口調が、どんどん不気味に映っていく。

　さらに、密子について調べていた九条開発の秘書・千秋（桜井日奈子）が、密子と謙一に接点がないこと、また、夏を夜道で突き飛ばした人物が密子である可能性を電話で誰かに報告しようとしかけた途端に密子が現れ、千秋の首元にためらいなく注射を刺した。

　密子の狙いがどこにあるかわからないため判断が難しくはあるものの、目的達成のためなら手段を選ばない人間だと見て間違いはなさそうだ。福原にとっては珍しい役どころだが、これは当たり役となりそうで期待が高まる。

　また、九条家の子どもたちを演じる上杉柊平や志田彩良、夏の子どもたちを演じる清水尋也や吉柳咲良、九条開発の秘書役には黒羽麻璃央に桜井日奈子と、脇を固める若手俳優陣も実力派ぞろいだ。これからそれぞれの個性が際立ってくることで、物語にさらに奥行きが増してくることだろう。

　主人公のシンデレラストーリーを軸に、大企業の権力争い、元社長の殺人にまつわるサスペンスを、正体不明の密子がかき乱していく。先の読めない作品から目が離せそうもない。

（文・あまのさき）

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