残された時間をちよみと幸せに過ごすこと
南くんが小さくなった原因とは、一体なんだったのか――。結論をいってしまえば、遺伝子学の研究をもってしても何ひとつ解明できなかった。ただいえるのは、理論上南くんは存在していないということだけだ。
しかし、その揺るぎのない事実に南くんは傷つかなかった。むしろ「ちゃんとわかってよかった」と、曇りのないスッキリとした笑みを浮かべる。
南くんもちよみと同じように、自分より恋人を大切に思っていた。もし自分が一番大事であれば、消えるまでの残り時間にとらわれてしまっていただろう。
だが、南くんが見据えているのは、“残された時間をちよみと幸せに過ごすこと”である。だから可能性で悩むことがなくなった今、晴れやかさを内包した表情を見せたのだ。あのときの南くんの温かな笑顔は、深く心に刻まれるものがあった。