「ちよみ、世界で一番幸せになれ!」が切ない…。
また、印象的だったのは、楓が語った“2011年”の話だ。その年は大きな地震があり、南くん家族を呼んで一緒に夜を過ごした。翌日テレビから流れてくる映像は、現実とは思えない凄惨なものばかり。そんな時に百合子が発した言葉が忘れられないという。
「どうしようもなく悲しいことは起きる。そして、悲しい亡くなり方をする人はどうしてもいる。でも、亡くなり方が悲しいからって、その人の人生を可哀想だと思うのはやめよう。可哀想な人で終わらせちゃいけない。幸せな人にしなくちゃいけない。それができるのは、生きている人たちだ」
実際に、2011年は東日本大震災をはじめ、新潟・福島豪雨など大きな災害に見舞われた年だった。ファンタジーでもない限り、死に猶予は存在しない。いつも突然やってきて、大切な人の命を奪っていく。そんな死が身近に存在するなか、生きている者たちはどう向き合っていけばいいのか。その答えのひとつを、百合子の言葉から見つけられた気がした。
南くんを幸せな人にできるのもまた、ちよみだけである。湘南の海が見える思い出の場所で、お互いの気持ちを伝え合う二人。「南くんが大好き!」と叫ぶちよみに対し、「俺も」ではなく「ちよみ、世界で一番幸せになれ!」と返す南くんが、ちょっぴり切ないけれど。