“天才”ではなく等身大の医師の成長を見守る
ドラマが始まってすぐに歩の成長物語であることが理解できた。第一に歩は駆け出しの青年医師であり、初回から患者を危機にさらすなど医師としてまだまだ発展途上だ。また、精神的にも未熟で、「兄のために医者にならなければ」という使命感から医師を志した歩は、演じる杉野本人がインタビューで語るとおり「どこか後ろ向きで、周りの人に導かれて自分の生き方を選んできたタイプ」だ。
その点で、天才ドクターが出てくる『ブラックペアン』(TBS系)や、「令和の歌舞伎町を描く」というテーマに医療モノというジャンルを通して挑戦する『新宿野戦病院』(フジテレビ系)など、今期の医療ドラマとは大きく毛色が異なる。『マウンテンドクター』は漫画やアニメに出てくるようなキャラクターを見て楽しむのではなく、どこにでもいるような等身大の医師の成長ぶりを見せ場としていくのだろう。
しかし、未熟な医者がひとり立ちしていくまでの物語ではないということが初回の第1話のラストで明らかになる。山岳医として一難乗り越えた歩は国際山岳医となるため、海外研修のため病院に1年間の休職願いを出すのだった。
それから、物語は1年後に進み、成長を遂げた歩が信濃総合病院に戻り、山岳医療チーム「MMT(マウンテン・メディカル・チーム)」のメンバーに任命される。一方で、「患者を1人殺した」と伝えられる江森は姿を消していたのだった。