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クドカンによるリブート作が続く理由

『終りに見た街』©テレビ朝日
『終りに見た街』©テレビ朝日

 クドカンといえば、昨年も黒澤明監督が『どですかでん』のタイトルで映画化されたことのある山本周五郎の小説「季節のない街」を現代にリブートさせた。その際は舞台を戦後のバラック街から現代の仮設住宅に置き換えており、いずれの作品でもクドカンのアイデアが冴え渡っている。

 だが、そもそもなぜクドカンによるリブート作品が続いているのだろう。それを考えた時に、クドカン自身が先人たちの残した物語に現代人が学ぶべきものがあると信じているからではないかと思い至った。特に今回のドラマは放送後にSNSで流れてくる感想を見ていても、何もせずとも平和が恒久的に続くと信じて疑わない現代人に警鐘を鳴らすには十分な作品となっていた。

 太一が手がけた『刑事七、八人』という某ドラマを彷彿とさせる作品名、NHK朝ドラ『あまちゃん』(2013)で“前髪クネ男”ことTOSHIYAを演じた勝地涼のコメディセンスをフル活用させたプロデューサー寺本の癖つよキャラ、そんな寺本の「東京大空襲をラブストーリーのフォーマットに落とし込んで、すれ違いとか腹違いとか韓流要素も加えちゃって、BL成分も匂わせちゃって、不時着したB29の操縦士と情報局の少佐が恋に落ちる」というもはや何の物語かわからないオーダーから覗く風刺など、前半はクドカンらしさが続く。

 塚本高史、田辺誠一、神木隆之介、西田敏行、橋爪功とチョイ役に至るまで出演者も豪華。意外にもクドカン作品に初出演の大泉洋と、吉田羊が抜群のコンビネーションで見せる会話劇も面白く、私たち視聴者を油断させる。だが、太一たち一家がタイムスリップした途端にコメディ要素はどんどん薄まっていき、最後はハンマーで頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。

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