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一度始まった戦争に抵抗する術はない…。

『終りに見た街』©テレビ朝日
『終りに見た街』©テレビ朝日

 SNSを見ていて目立ったのが「レオが可哀想」という感想だ。レオとは、太一が16年間も連れ添った愛犬のこと。だが、タイムスリップ後に太一たちは憲兵に見つかる前に家を捨て、泣く泣くレオを置いて行かざるを得ない状況となる。その後、太一が家を焼くために戻った時にレオは目の前で憲兵に殺されてしまうのだ。

 今や多くの人がペットを家族の一員として大切に扱っていて、フィクションであっても動物が酷い目に遭う姿は見たくないという人も多い。だが、この頃、日本ではペットの犬や猫も供出させられ、毛皮や食肉に利用された。戦争はどんなに泣き叫ぼうとも、人々から大事な物を奪っていく。

 戦時中の日本に突然放り込まれた太一たちも生き抜くためには、早々に家と愛犬を捨てざるを得なかったし、やがては困窮して配給を受ける代わりに、国民登録(「マイナンバーカードみたいな感じ?」というドキッとさせられる台詞もあった)をして戦地や軍事工場に行くことも甘んじて受け入れた。一度戦争が始まってしまえば、抵抗なんかできずおのずと巻き込まれていくということが分かる。

 そんな中で、子供たちに心境の変化が現れる。新也が行方をくらませたかと思えば、突然軍服を着た姿で現れ「みんなお国のために働いていますよ」と東京大空襲の被害を最小限に留めようとする父親たちを痛烈批判。「天皇も人」「どうせ日本は負けるのに」と言っていた信子や稔も、日本が負ける未来を変えればいいと自ら進んでお国のために戦おうとする。

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