多様性が生んだ歪み
未来はもともと障害者に対してデリカシーがあるタイプではなかった。冒頭、ロケで訪れたカフェでは手に障害のある人に「(サーブする際は)映らないように反対の手でお願いします」と言えてしまう。これだけ多様性が叫ばれる時代において、少々ひやりとするやりとりだ。
そんな彼女がキラキラ学園ものを作りたいと思って出した企画書が、多様性をテーマにしたドラマへと塗り替えられていく。そういったテーマに興味関心があるならまだしも、興味もなければ深く考えたこともなさそうなのに。人選という概念はないのだろうか? と思っていると、部長は「若い女性の企画だから」ということを平気で宣う。
未来の“何か”を見込んだわけではなく、多様性の一部であるジェンダーバランスを鑑みての採用だった。なんと浅はかなのだろうと思わずにはいられないが、同時に、まだまだ世の中にはこういうことが多いのだろうという諦念も感じる。
だが、未来にはドラマが好きという誰にも引けを取らない強い気持ちがあった。それを頼りに、彼女はなんとか企画を成立させようと奮闘していく。その過程で出会ったのがハルだ。ハルに魅力を感じた未来は、ドラマの主役をやってほしいとお願いする。
ところがハルは、未来の言葉の端々に表れる障害者に対する哀れみを感じ取り、障害者だからという理由で起用されるのは嫌だと突っぱねる。障害を利用して夢に近づくことを良しとしないハルと、女性だからという理由で目標が叶おうとしている未来。多様性が生んだ歪みを感じざるを得ない。