大切なのは「人を知る」こと
さらに、人間を描くために未来が掴んだ糸口が、「人を知る」ことだった。性別も障害の有無も取っ払って、人と人として向き合うこと。合わないことや腹の立つこともひっくるめて、まずは受け入れること。
そして「人」には自分自身も含まれていること。そうやって生まれた信頼関係の先に、わかり合うためのきっかけが転がっている。
だが、ドラマ制作の過程で、わかり合えずに零れ落ちていってしまった人がいる。未来の恋人・龍太郎(岡山天音)だ。彼は将来を期待された脚本家だったが、その後作品を生み出すことができず、フリーターをしていた。今回、脚本協力という形で作品に携わるが、メインの作家による大胆な赤入れや現場の状況によって飲み込まざるを得ない妥協に耐えかねて途中で辞退してしまう。
岡山天音が演じた龍太郎からは、行き場のない苛立ちやもやもやを抱えた青年独特のピリついた空気が漂う。それは龍太郎のプライドの高さが生んだコンプレックスに由来する。ある意味で幼稚な龍太郎をすくい上げるほどの余裕は誰にもなかったし、彼自身もそれを望んでいなかったようにも見える。わかり合うには双方の合意が必要だという示唆を感じた。