違う人間だからこそ、関わって、ぶつかる
また、印象的だったのは、未来がハルからより良いお芝居を引き出すべく、ほかのスタッフに内緒でハルの劇団仲間たちをエキストラとして参加させたこと。自然な表情で演じるハル、そしてそれに呼応するような好演を見せる相手役の俳優・小早川新太郎(菅生新樹)の姿を見て、スタッフたちのハルに対する扱いが変わっていく。それまでは障害者であるという意識が先行していたが、ハルを1人の役者として捉えるようになったのだろう。
台本の遅れもあったが、読み合わせの時間をつくったり、代役を立てることをやめたりするようになった。ただ、自分たちにはハルの身体のことが全部はわからないから、体調を気遣う。
なるほど、と腑に落ちた。わたしたちはどこまでいっても違う人間だ。相手を理解したいと慮ったって、とことん膝をつきあわせて話し合ったって、本当の意味でわかり合うことはできない。健常者と障害者とを線引きするなんて、なんと無意味なのだろう。
でも、だからこそ、知りたいから、好きだから、関わって、ぶつかっていくしかないのだ。そこに誰かに対してだけ特別な、ではなく、誰にとっても普遍的な思いやりを添えて。
(文・あまのさき)
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