つらいときはもっと周囲にSOSを
少し前までは祖父母と同居していたりする拡大家族が多く、地域全体で子育てに取り組んでいた。しかし、核家族が増えた現代では、周囲にSOSを出せる人がおらず、「自分がしっかりしなきゃ」と頑張りすぎてしまうこともある。
体調を崩して、西園寺さんにルカを預けたとき、楠見くんは妻が亡くなってから初めて娘と離れて眠ったらしい。お母さんを亡くした娘に寄り添ってあげたい気持ちもあったのだろう。
しかし、1年に一度くらい子育てから解放される日があっても良かったのではないかと思ってしまう。そして、楠見くんが「(娘と離れて)解放された」と思ってしまったことに罪悪感を抱いてしまったのも苦しい。
きっと、完璧に見えていた楠見くんの妻だって、ルカを幼稚園に預けたあとや、誰かに預けて出かけるとき、「解放された」と思ったことがあっただろうに。やっぱり、楠見くんにとっては、完璧な妻の面影が呪いのようになってしまっているのではないだろうか。
『西園寺さんは家事をしない』はポップなラブコメではあるが、ひとり親世帯が抱える悩みなどを繊細に描いており、“本当にしんどいときは誰かに頼っていいんだよ”というメッセージが込められているように感じる。「もう、しんどい」「ちょっと助けて」と言う相手は、血のつながった家族じゃなくていい。声をあげてみたら、西園寺さんのように救ってくれる人がきっと近くにいるから。