「自分の存在には意味がある。すべての人の存在にも意味がある」
クールビューティーな印象とは裏腹に、親しみのある人柄とコメディエンヌとしての才能を持つ松本若菜にしか作り上げられない、頼もしくもちょっぴり抜けたところもあるチャーミングなヒロインだった西園寺さん。
一見とっつきにくい雰囲気ながら、松村北斗がその繊細な感情を拾い上げ、温かみのあるキャラクターに仕上げた楠見くん。そして無邪気でありつつ、パパはもちろんママも西園寺さんも好きだからこその複雑な感情を表現してくれた倉田瑛茉演じるルカ。
そんな自然と好きになってしまう3人がみんなに囲まれ、一人で思い詰めることなく、文化祭のような楽しい雰囲気で誰もが納得できる道を探ってきた。その中には目に見えずとも瑠衣がいて、最後にルカの目にだけ大好きなママがパパと西園寺さんの隣で笑っている姿が映る。その光景にレスQとのコラボ企画の最終回で横井が言ったことを思い出さずにはいられなかった。
「味は必ず残ってるんです。記憶の中に、心の中に、次に一歩を踏み出す勇気に。時に、苦い味になることもあります。だからこそ、出会いはかけがえのないものだと知ることができ、大切にすることができる」
「自分の存在には意味がある。すべての人の存在にも意味がある。そう気づいた時に、別れに涙とか後悔とか必要ないってことがわかるんです」
私たちも西園寺さんたちのように、すべての出会いに感謝し、自分のことも相手のことも大切にすることができたらいい。そして、その人の中に良い味を残せるように。きっとこのドラマも最終回は迎えたけれど、昆布とかつお節の出汁みたいに私たちの記憶と心に染み付いて、優しい気持ちをいつまでも思い出させてくれるのだと思う。
(文・苫とり子)
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