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役の人生を姿勢で語る

『西園寺さんは家事をしない』第3話より ©TBS
『西園寺さんは家事をしない』第3話より ©TBS

 1話終盤で、住む家はまだみつからないが家を出ていくと告げるシーンでは、会社では見せることのなさそうな、少し丸めた姿勢がゆっくりと映し出され、西園寺はそこに実母の姿を重ねる。

 妻を病で亡くし、悲しみにくれる暇すらなく、無我夢中で駆け抜けてきた1年間。その様子は回想シーンと共に明かされたが、スマホに育児に関する情報をまとめ、しっかり子どもと向き合って奮闘する楠見の姿が描かれた。

 ルカにかける言葉や慣れた様子で抱っこしたり注意したりする様子からも、楠見の“頑張りすぎる”性格や誠実さが伝わってきた。そんな彼の、弱さや寂しさ、しっかりしなければと奮闘する姿…あらゆる感情が絶妙に丸めた背中に詰まっているようで、その姿はしばらく尾を引いた。

 第1話からしばらくは頬の動きがほぼなく、口角を上げて笑う場面はわずか。第4話までは回想シーンの中だけだった。西園寺と初めて食事会をした場面では、隣のテーブルのシュラスコを見て、楠見は学生時代を思い出していた。

 妻・瑠衣(松井愛莉)との回想シーンだけは口角があがり、柔和な表情を浮かべる。思い出の中には、たくさんの幸せが詰まっているのだ。

 第2話では、借りた洗濯機に西園寺の洗濯物を見て慌てた楠見。これも少しずつ心を開くきっかけになったように映った。心がしおしおになった西園寺にスープを差し出す場面では、心配した様子の眼差しを。第4話ではルカのお誕生日会というミッションを機に、さらに距離が縮まった2人。心の距離に連動した表情の崩し方が絶妙だ。

 一方で、第6話で描かれた楠見の学生時代。会社で見せるスマートな振る舞いはなく、ボールの投げ方から想像するに運動神経とは無縁だろう。身なりに気を遣う余裕も興味もなく数式に没頭した学生時代。それが瑠衣との交際、結婚によって変わっていったーー。僅かしか描かれない場面だったが、その月日を想像させ、納得感を与えてくれた。

 松村といえば、2021年放送の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』(NHK)で、松村は大正時代を描いた安子編で雉眞稔を演じた。そこでは背中に板を括りつけたかのように、びしっと正した姿があり、そこから時代背景や、家柄、置かれた立場、誠実な性格を感じ取った。松村は声色やセリフ回しもさることながら、表情や姿勢からもその場面の印象を強く残す。

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