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主人公・西園寺一妃が視聴者に与えてくれる沢山の”気づき”

『西園寺さんは家事をしない』第3話より ©TBS
『西園寺さんは家事をしない』第3話より ©TBS

 主人公・西園寺一妃についても語り出せば長くなるのだが、カラッとした性格でありながらも情に厚い。おせっかいとも違い、困っている人がいたら救いの手を差し伸べる。当たり前のようで難しいことをやってのける。

 自分の気持ちを把握し、まるでPDCAを回すかのごとく、菩薩のように振舞ったり、「駆逐、駆逐…」と整理して行動する姿には、笑いだけではなくはっとさせられる。心の中では様々な葛藤があるものの、乱暴に感情をぶつけるのではなく、気持ちを伝えるのにも配慮を感じる。

 ワンオペ育児をシングルファーザーから描き、“偽家族”を巡っては、子どもたちのストレートな疑問をフックに、保護者たちとの会話を通して“普通”について考えるきっかけを与えてくれた。

 2人が多摩川沿いを歩きながら、“普通”というものに縛られていたことに気づいたように、いつのまにか刷り込まれた価値観に気づくのも容易ではないと思い知らされる。

 第5話で、カズト横井(津田健次郎)が西園寺を食事に誘う場面がある。当時、西園寺の「流行るってことはたくさんの人の力になるってこと」という言葉に救われた横井は、きちんとお礼を伝えていた。てっきり告白するものだと見ていた自分が恥ずかしいやら…。

 後にそのような展開を見せたものの、男女が食事、恋心…と、こんな場面からも偏りに気づかされたのだ。コミカルで穏やかな雰囲気であるのも物語に没頭できるポイントで、時にはっとさせられたり、時に涙したり…。心をあたためつつも、様々な気づきを与えてくれる。

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