ホーム » 投稿 » ドラマ » 視聴率2ケタ台キープ…一筋縄ではいかない面白さの肝とは? ドラマ『さよならマエストロ』第5話考察&感想レビュー » Page 4

日々を彩ってくれる楽しさと優しさ

『さよならマエストロ〜父と私のアパッシオナート〜』【番組公式インスタグラムより】
さよならマエストロ父と私のアパッシオナート番組公式インスタグラムより

響の繊細な部分を垣間見たと同時に、今回は一縷の望みも感じた。憧れの柳亭小痴楽とのコラボイベントを見に、響はうたカフェを訪れた。そこでは小痴楽の出囃子が生バンドによりジャズ風にアレンジされ、落語終わりには大輝の歌声に観客が揺れていた。

二朗(西田敏行)がしみじみと言った「音楽って楽しいなぁ」は、そのまま私たち視聴者の感想と重なる。その光景を見ていた響が、音楽をはじめた頃のようにただ純粋に“楽しむ”ことを思い出すのではないかと予感させるシーンだったように思う。

そして思い返してみれば、家族の再生と同時に、難しいことは抜きにして「音楽を楽しむ」ということも、この作品を貫く1本のテーマだ。特に晴見フィルの演奏シーンは技術云々よりも、音それ自体や演奏における人々の心の機微にフォーカスが当たる。

響のような大きな挫折もあれば、例えば夏目がパン屋さんに自転車を置いてきてしまったような失敗も、生きていれば絶対にある。でもそのそばには、音楽のように日々を少しだけ彩ってくれる楽しいことがあるよ、というメッセージが込められているように感じた。その優しさこそ、このドラマの1番の肝であり、面白さだ。

結局、響も海も、志帆までも家に戻ってきた。4人で食卓を囲むと、これまで我慢を重ねてきた海がついに「4人でご飯食べられるんじゃないかって期待しただけ」と本音をこぼす。現在高校2年生の彼にとって、家族4人で過ごした記憶はきっとそこまで多くないだろう。いまの、この瞬間がどれほどうれしかったことか。

これまで笑顔が多かったからこそ、海の涙が考えるきっかけを与える。決してシリアスになりすぎない、家族のなかで1番大人な高校生の絶妙な匙加減で言葉を紡ぐ大西利久に心を奪われた。

いがみ合う家族が、血が繋がっているからという理由だけで無理に一緒にいるべきだとは思わない。でも、こんがらがった糸を丁寧にほどいていけば、夏目たちは、大丈夫だと信じたい。志帆が持とうとした熱い鍋を、「俺が運ぶよ」と率先して持った夏目。まだ変わっていける証拠だ。海の期待が、叶えられることを願っている。

(文・あまのさき)

【関連記事】
玉山鉄二、演技上手すぎ…新キャラ投入で持ち直しは成功した? ドラマ『さよならマエストロ』第4話考察&感想レビュー
西島秀俊の最高傑作は…? 世界的評価の高いおすすめ出演作5選。映画好き必見の珠玉の作品ばかりをセレクト
最もほっこりしたシーンは? 「何食べ」ロスのファン必見…ドラマ『きのう何食べた? season2 』名場面5選

1 2 3 4
error: Content is protected !!