30年前の失踪事件が発端?
浮かび上がる計画の壮大さ
今回の事件に武蔵だけでなく二葉までも巻き込まれたのは、失踪した武蔵兄弟の長男・健一について龍が言及したからだった。30年前の失踪事件にまつわる嘘が膨れ上がり、空港占拠事件にまで発展したということだろうか。
また、大和は病院占拠事件を完遂するために、事件の計画を駿河から買ったと話していた。
“5年前の事件”、そこに連なる空港建設の土地と会社にまつわる人々の嘘と空港占拠事件。3年前に勃発した「P2計画」を巡る悲しい事件と、それにより引き起こされた1年前の病院占拠事件。この2つが繋がっているのだとしたら、背景にはとんでもなく壮大な計画があったのではないかと思えてならない。
まだまだ謎が散りばめられたままの「新空港占拠」。武蔵が「こいつら、人間じゃない…」と言ったように、獣は鬼以上に残虐性をもって人質たちを追い詰めていく。配信で嘘を暴かれる対象となった際に乗せられる、まるで死刑台のような装置だけでなく、毒を盛ったと嘘をつき解毒剤を巡って醜い争いをさせるなど、危機的な状況を作り出し人間の本性をあぶり出していく。
通底しているのは「嘘」で、真実は作り出せること、目に見えているものが真実とは限らないことを龍は訴えてきた。人の悪意と欺瞞に塗れた嘘がはがれたとき、わたしたちは獣が背負わされた傷を目の当たりにすることになる。
計画の大きさを思うと、特に龍と駿河はもう何年もの間、心の中に獣を飼いならしてきたと考えられる。前作の「愛する人の命か? 国民全員の命か?」という悲痛な問いかけを思うと、彼女たちの身に起きた出来事を知ることが怖いような気もするが、描かれる“真実”から目が離せそうもない。
(文・あまのさき)
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