”謎の男”ジェシーの名演
いまだ明かされない戌の正体も気になるところだ。和泉の荷物に仮面を忍び込ませた点、また「武蔵が山猫の正体にたどり着いた」などの情報が獣たちに届いていた点から見ても、やはり警察内部の人間と考えるほうが自然だろう。
6話の冒頭、全員に仮面を配布するときはたしかに12人が円になっていた。小柄に見えたので、女性の可能性が高そうだ。となると、やはり情報分析官の岩槻(白石聖)か……?
大和が拘置所を出て行こうとする本庄に向かって投げかけた「あなたはなにと戦っているんですか?」という言葉も耳にこびりついている。これまで信じてきたものが一夜にして崩れ去っていった彼女にとって、呪いとなりそうな言葉だ。
それこそ、本庄のなかの獣を呼び覚ましてしまいそうな。彼女には、なんとなくこちらにいてほしい気がするのだが、果たして。
最後に特筆したいのは、ここまでさまざまな表情を見せてくれたジェシーについて。血まみれの姿で不気味な登場で苦しみの表情を見せる場面が多かったが、敵か味方か、どちらともつかない絶妙な芝居でひきつけられ続けた。
1話から役どころを明かされずに引っ張られ続け、ともすれば、“謎の男”、もういいって……!となりかねないところを、うまく調整していた印象だ。ここから先、大河が獣になった理由が明かされることだろう。
天真爛漫さのなかに愛情深さを覗かせるジェシーが、悲しみの果てに壊れてしまった人物を演じる様を観られるかもしれないと思うと、楽しみと怖さが入り混じる。感涙必至の名場面となることを期待したい。
(文・あまのさき)
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