物語をけん引した高橋メアリージュンとジェシーの快演
手に汗握る展開で観る者を引き付けた『新空港占拠』。前作『大病院占拠』(2023)と事件のフォーマットを同じくしていたことで、継続視聴した者は事態の把握が容易で、世界観にのめり込みやすい作品となった。
武蔵を演じた櫻井と並んで物語をけん引したのは、ブレることなく自身の正義を示した悠月を、圧倒的な存在感で演じ切った高橋メアリージュンだろう。過去に『アバランチ』(フジテレビ系、2021)などで披露し称賛されたアクションはもちろん、固い決意を感じさせる表情は文句なしにかっこよく、同時に不気味ですらあった(本人のSNSでは笑顔が多い分、そのギャップもまた魅力的だ)。
そしてそんな彼女が時折感情を爆発させたように涙を流すと、それは格別の威力をもってこちらの胸を刺す。妹の駿河紗季(宮本茉由)や家族への接し方から、無表情でも深い愛情を感じることができたのは、ひとえに高橋の表現力の高さによるものだろう。
また、前半戦を“謎の男”として過ごし、敵か味方かもわからないまま、ひたすらいたぶられ、後半で突如“最悪の敵”として表舞台に姿を現す大河を演じ切ったジェシーにも拍手を贈りたい。悠月の綿密な計画に対し、最後は自爆を考えている大河の一連の行動は終始向こう見ずで危なっかしい。
ともすれば幼稚にも見えかねない犯行を、姉に対する愛情によるものというピュアさに還元したのは、ジェシーがこの役と真摯に向き合うことで創出した空気の賜物だろう。