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生瀬勝久の明るさ、平岩紙の強さ

『新宿野戦病院』第11話より ©フジテレビ
『新宿野戦病院』第11話より ©フジテレビ

 ヨウコを中心に、目の前の患者を助けることで団結していった「聖まごころ病院」。そのなか、一貫して「世間的に言っちゃまずいことを言う」「不謹慎」担当だった啓三。

 利益主義で、極端な異論をサラリと日常会話にする、生瀬勝久の持つ明るさに感動した。リツコに対しての「妖怪ジャズババア」はともかく、ヨウコの「ビッチの姉ちゃん」が笑って流せるのは、生瀬の憎めなさゆえ。ヨウコの無免許について情報リークを家族全員の疑われた際の、

「お前らが俺を疑う気持ちもわかるし、俺ですら、俺を疑う実績が俺にはある。ただ、今回ばかりは俺じゃねえ!」

という説明は見事である。

 そして最後に、はずき(平岩紙)。病院の長女に生まれ、女性なだけで、居場所がなくなる。それでも父の面倒を見、ソーシャルワーカーとして働き、積み上げ築いた自信。それがヨウコの登場で木っ端みじんに打ち砕かれてしまうのだ。怒りを爆発させ、自然にまた自分を取り戻していく感じを平岩紙が仏頂面ながら温かく演じていて、本当に好きだった。

 このドラマは私にとって、はずきの物語でもあった。なので、ヨウコが逮捕された際、病院のメンバーのなかで真っ先に「ヨウコ!」と叫ぶのが享ではなく、はずきなのは、納得も納得、大納得である。

 ラスト、ヨウコが「聖まごころ病院」に足りないものとして、舞に託すのが「心のケア(カウンセリング)」。名前まで回収していく職人技を見せつけて終わった最終回。ラストのナレーションは、享。とてもやさしい語り口であった。

 歴史は繰り返す、ということをコメディに包んで見せつけられた今作。このドラマで描かれたトラブルや感染拡大が今後、現実と化さないようにと願うが、簡単になんとかできるものではない。それでも、「雑」にでも、できることをしよう、と、つくづく思うのである。

(文・田中稲)

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