『虎に翼』に続き家に絶望する平岩紙
さて、冒頭に記した通り、今回後半のメインは平岩紙である。今年、一番熱い役者と言っていいだろう。これまで軽いタッチで散りばめられたエピソードが、シリアスに回収される物語後半は、本当につらかった。
平岩が演じるはずきは、性別が「女」だったことでガッカリされ、さらに医大を5回落ちたことで、後継ぎの期待に沿えなかったという呪縛にかかる。
しかし、ソーシャルワーカーとして見事な働きぶりをみせているのだ。それでも、父親が不倫で産んだ子どもが、同じ女性であるにもかかわらず医師になり、転がり込んでくるのはつらい。
「病院、ヨウコさんに継がせるの? いいけど(叫び)!? でも私がどんな思いで…あの病院でどんな思いで働いてきたか、ちょっとは考えてからにしてよね!」
第2話ではマッチングアプリで婚活に励み、第3回では美容整形の行列に並ぶなど、彼女の「外科医の婿をもらい病院を継ぐ」努力がコミカルに描かれていただけに、ここにきて、彼女のもがきの深刻さにハッとした。
平岩紙は朝ドラ『虎に翼』(NHK総合)の梅子役でも、弁護士一家に嫁ぎ、縛られ、見下げられる悩みを見事に演じていた。第64回、「ごきげんよう!」&障子スパーン!(障子を両手で空ける音)で去っていった、あの家族との縁切りシーンは、朝ドラ屈指の名場面との声も高い。
はずきにも、『虎に翼』の梅子のように縁切りとはいかないまでも、家族の呪縛、心の鎖を断ち切る展開がくることを待ち望むばかりだ。
最後に、未練がましいが、第2話でいい味を出していた、ダイスケ・ダルメシアン三世(細貝圭)の再登場を願う。なんなら、はずきさんの憂さ晴らしにつきあってあげて!
(文・田中稲)
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