紗英が不幸で終わらなかった理由
結局、九条の母親は自殺未遂を起こして脳に障害を負い、施設に入っている。九条は、自分のせいでそんなことになってしまった親に対して罪悪感を抱きながら、面倒を見続けなければならない。
遥人(大西利空)だって、そうだ。親を殺してしまったという重荷を背負いながら、出口のない地獄で生きていかなければならない。
“復讐”がひとつのテーマになっている物語ではあるが、復讐に燃えていたキャラクターたちが軒並み不幸になっているところに、本作が伝えたかったメッセージが込められているような気がする。九条も、遥人も、そして未久(田牧そら)も。みんな、幸せをつかめていない。最終的に幸せ(?)になったのは、不幸のどん底にいても、明るい希望を持ち続けてきた紗英だ。
紗英は、九条や遥人のように親に復讐をしてやろうとか、未久のように誰かの幸せをぶち壊してやろうとか、そういう方向性の復讐心は持っていなかった。ただ、“スカイキャッスルに住みたい”という前向きな夢を持つことで、自分を奮い立たせてきた。ここが、前者との大きなちがいだったのだと思う。