「秘密の時間を持っちゃった」
舜(重岡大毅)を翻弄する花(新木優子)に注目
花は、黒板に舜の娘のフルネーム「桜木花奈」と書き、その横に自分の旧姓「桐野花」と書いた。そもそも教室へと向かう廊下を歩くときも、肩が触れるどころか、肩を重ねるようにして距離を縮めていた。
先日のスーパーでの再会では、そっけない素振りで別れたのに。仮に中学時代、舜のことが好きだったとしても、舜の娘に自分を重ねて喜んだり、「秘密の時間を持っちゃった」「この日のことはしっかり覚えておこうね」と指切りまでして約束したりするだろうか。
ただ、そんな風に心をザワつかせる人ほど魅力を感じやすいもので、長い髪から漂う香りもシャンプーから、甘い香水へと変わればなおさら。変わらぬ美貌に天真爛漫な一面、そっけない態度に、親密な言動。同級生…それも意識しあった者同士だからこその特別な距離なんだろうか。
「悪りぃ、悪りぃ、遅れた」と、“ヒーローは遅れてやってくる”のごとく、同窓会に華々しく登場した直哉。花のことを呼び捨てにすると、花も「直ちゃん」と返す。たった一言で、中学卒業後も続いてきたであろう関係性を匂わせた。
そんな些細な積み重ねが、舜に揺さぶりをかけてくる。その後2人は罰ゲームなるものによって会場を抜け出すのだが、ここで運命の輪がぐわんと回転するように、舜と花の距離はさらに縮まった。
ドラマ冒頭では、白いワンピースを着たロングヘアの女性が、雑木林を走る姿が描かれた。何かから逃げるような、ただ事ではない雰囲気だった。舜が「もう一度だけ確かめたい花火もある」とつぶやいたのは、単に花への思いに対する比喩ではなく、この描写やほかの出来事とつながっているのだろうか。
第1話ラストの、舜にSOSを出すかのような花の言葉がひっかかる。第1話から視聴者も花に翻弄されてしまっている。
(文・柚月裕実)
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