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復活する寅子の「はて?」

連続テレビ小説『虎に翼』第10週
連続テレビ小説『虎に翼』©NHK

 寅子が決意を新たにした矢先、民法改正審議会の委員として民事局にやって来ていた穂高(小林薫)が、寅子に就職先を世話したいと申し出る。家族を養うために1度逃げ出した場所に戻ってくるなんて、とか、自分が寅子を不幸にしてしまった、とか、わけのわからないことを言い重ねる。

 もちろん、穂高の気持ちもわからないではない。かわいい教え子だから、いらぬ苦労はさせたくないのだろう。だが、それはあまりにも独りよがりで、寅子のことが見えていなかった。

 そして、弁護士を辞めて以来となる寅子の「はて?」が復活する。そのときの、桂場の表情。驚きと喜びに満ちていた。穂高に「わたしは好きでここにいるんです」と宣言した寅子は、その後の民法改正審議会でも自身の考えを堂々と発言。ライアンも、そして桂場も、わたしたち視聴者だって、寅子のこれを待ち望んでいたのだ。おかえり、寅ちゃん。

 いくら男女の平等が謳われようとも、環境はそんなにすぐには変わらない。でも、この国は変わろうとしているし、生まれ変わった憲法や民法がある。そして寅子には、優三がくれた言葉と、優三の気配がいつもそばにある。寅子のなかで、法曹界でいま1度生きていく覚悟が、本当の意味で決まったのではないだろうか。

 公布された新民法において、結婚後の名字を夫のものにも妻のものにもできることが明記された。その条項を読んで、もしかしたら花江の名字だったかもしれないし、はるの名字だったかもしれない、と楽しげに話す猪爪家の人々。いろんな想像ができるということは、いろんな可能性が広がっているということ。そんなことを、優しく示唆しているようだった。

(文・あまのさき)

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