はる(石田ゆり子)が体現する無償の愛
彼らの行き場所を必死で探す寅子たちだったが、結局道男の引き取り手は見つからず、寅子が家に連れ帰ることに。事前に何の相談もしなかったものだから、花江(森田望智)の息子・直人(瑛人)と直治(楠楓馬)は道男が居候することを嫌がった。
自分たちのことを好意的に思っていなさそうな赤の他人が急に同居するとなったら、言うまでもなく恐怖だ。直人と直治の態度は納得できる。でも、はる(石田ゆり子)だけは道男を受け入れた。
それだけでなく、お金を盗んで逃げようとする道男に「はした金を盗んで逃げるより、手伝いをして三食食べてあったかい布団で寝るほうがお得」とまで言う。
心の広さ、というだけでは到底表現できない優しさ。誰かのためになにかをしてあげたいと思っても、こちらの気持ちが空回りして結局相手のためにならないこともある。でもはるは、道男のための正しい優しさを、正しい分量だけ分け与えているように見えた。
道男がそれを拒むのも、優しくされることに慣れていないからだと見抜く。こういうものを無償の愛というんだろう。
ところが、寅子が出張に出ている間に事件が起きる。花江に「直道(上川周作)の代わりになりたい」と言い出した道男と、直人と直治が殴り合いをはじめんばかりに。このとき、はるまでも道男を責めるような目で見てしまう。きっとそのことが堪えたのだろう、道男は猪爪家を去って行き、消息不明となる。