はる(石田ゆり子)との別れを受け入れられない寅子と視聴者
そんな矢先、突然、はるが倒れてしまう。しかも、医者は「夜を越せるかわからない」と言う。
そういえば、今週のタイトルは「家に女房なきは火のない炉のごとし?」だった。どういうことなのかと考えていたのだが、寅子にとって、そして猪爪家にとってなくてはならない存在だったはるがいなくなることを意味していたのだろう。「ちょっと待って、こんなの急すぎる」という寅子の言葉は、そのまま視聴者の気持ちを代弁しているみたいだった。
床に臥せったはるの最期の願いは、自分のせいで傷つけてしまった道男に会うこと。寅子は轟のところへ行き、なんとか道男を家に連れて帰った。はるは道男を見るなり、「よくここまで1人で生きてきたね」と抱き締める。
住む場所も食べるものもなかった道男にとって、きっと本当に必要だったものだ。最期まで、はるの優しさは正しかった。
その後、今週の、いや、もしかしたら本作の中で最も涙を誘う場面がやって来る。
子どもたちが寝静まり、はるのそばにいるのは寅子と花江だけ。そこで寅子は「やだ! 死んじゃやだ!」と、子どものように泣きわめく。寅子にとって、はるがいかに大切な存在だったのかということを改めて実感する。
もちろん優三や直言もたくさん寅子を愛し、背中を押してくれる存在ではあったけれど、はるの、時に厳しい大きな愛情のなかでだったから、寅子はここまで自分の生き方を貫いてこられたのだろう。