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知らず知らずのうちに男性に都合の良い存在となっていた寅子

連続テレビ小説『虎に翼』©NHK
連続テレビ小説『虎に翼』©NHK

 一方で、寅子が出演したラジオ番組でのこと。このときも密着取材は続いていた。最高裁長官の山本(矢島健一)による「家裁は女性の場所」という発言に、寅子は「はて?」と首をかしげる。そして、真の女性の社会進出について堂々と意見した。これには竹中も、同席していたライアン(沢村一樹)や多岐川(滝藤賢一)もうれしそうだ。

 このときは、チグハグしていなかった。竹中が求めていた「お嬢ちゃん」である寅子の声を聞けたから。でも、女性の社会進出のなんたるかが、きっと1番届かなければならないはずの女性である花江は、家でお昼ご飯を食べながら、ラジオの音をそっと落とした。

 かつて数少ない女性弁護士として“弱者”の立場にあったはずの寅子は、1度は仕事を離れながらもまた法曹界に戻った。家裁の設立に奔走し、茨田りつ子(菊地凛子)に気に入られたことをきっかけに時の人となった寅子は、寅子自身の目にも見えない社会の強い盾を得た存在になっていた。

 生きづらさを感じる女性たちの声を拾い、彼女たちの先陣を切る存在だったはずなのに、気付けば彼女たちの声は聞こえず、存在すら見えにくくなってしまっていたらしい。山本へ意見する姿は、女性たちのために戦うというよりはむしろ、社会を生きる男性たちに消費される存在のようですらあった。

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