家族の寅子への不満のオンパレード
そんな折、寅子の新潟への異動が決まる。寅子は優未(竹澤咲子)と2人で行く考えのようだったが、花江だけでなく直明(三山凌輝)もこれに反対。寅子はこのとき初めて、自分に見えている家族と、自分がいないときの家族の姿が異なるということを突きつけられる。
直明から、優未のテストの点数が偽造したものであったことを聞いたときの気持ちはどんなだっただろう? 優未がまだ小さなころから、「花江の言うことをよく聞いて、お利口さんにするのよ」と言っていた寅子の言葉が呪いになってしまっていた。いい子でいなければいけないという強迫観念が、優未に“スン”の仮面をかぶせてしまった。
自分がいないとき、みんなで楽しそうにカルタをする姿を見て、寅子は涙を流す。寅子だって、優未の笑顔を奪いたかったわけじゃないのだ。そして、家族会議と称して、自らのよくないところをみんなから聞き出そうとする寅子。すると、出るわ出るわ、不満のオンパレード。
特に印象的だったのは直明の言葉だろう。就職の相談に乗ってもらえなかったこと、いつも忙しそうで声をかけにくかったこと、そして「悲しい! 寂しい!」とまるで子どもみたいに言う。戦争の最中から、直明がたくさんの我慢を強いられてきたことを改めて実感する。いつも凛としていた直明の“弟”が全面に出た瞬間だった。