優未との関係修復の鍵は父・優三
溝、といえば、気になるのは寅子のもうひとつの奮闘、優未(竹澤咲)との関係性だ。これまで仕事に没頭するあまり、優未に“スン”とさせてきてしまった寅子は、母としても完璧を目指そうとする。
昼休みを利用して夕飯の買い物をしたり、仕事を早々に切り上げたり。この溝に注ぐべきは、寅子の完璧な姿を見せることではなくもっと人間臭いことなのに、寅子はそれに気づいていない。
花江(森田望智)からの手紙にも「とらちゃんにしかできないことを」と書いてあり、寅子はそれを模索する。すると、優未のほうから糸口を垂らしてくれた。
家で勉強しているときは間違えないのに、テストになると緊張でお腹が「ぎゅるぎゅる」になってしまうという優未からの告白。優三(仲野太賀)の、あのぎゅるぎゅるを思い出し、寅子とともに思わず頬が緩んだ視聴者も多かっただろう。優未の中に、優三が生きていることを感じてうれしくなる。
「お父さんに似ちゃったか」と笑う寅子に、優未は優三についての質問をする。花江たちだけに向けられていた、あのキラキラの笑顔で。これこそ寅子にとっての溝を埋めるチャンス。2人にとってかけがえのない存在である優三のエピソードが、溝を満たしてくれるかもしれない。
ところが、寅子は優三について話すことができなかった。胸が詰まって、言葉にできなかったのだ。布団にくるまって泣く寅子を見て、いかに優三の存在が大きかったか、不在が大きな穴となっているかを実感する。