悪の定義がない美佐江
新潟市内で発生した売春事件に関わっているとして、美佐江が補導された。しかも、一緒に補導された美佐江の同級生2人は事実を認めているという。その2人の手首にも、もちろん美佐江手製のものと思われる赤い腕飾りが。
当然、寅子は美佐江がこの件に無関係とは考えない。疑いが晴れて、三条支部に寅子を尋ねてきた美佐江に「本当のことを話してほしい」と迫る。美佐江は、表情を変えないまま、悪の定義がわからないと話しはじめた。「どうして悪い人からものを盗んじゃいけないのか」「どうして人を殺しちゃいけないのか」…。
もはや倫理としてわたしたちの身体に沁みついていて、あえて言語化するのが難しいこと。美佐江はそれについて考え続けている様子。美佐江が新潟近辺で起こる少年少女の事件に関わっていたとして、その理由はむしゃくしゃしたから悪いことをしたかったとか、自分の言うことを聞く人たちが面白かったとかではないらしい。
得体の知れない怖さが、寅子を襲ったのだと思う。そこへ訪ねてきた優未(竹澤咲子)を、美佐江から守るみたいに、寅子はギュッと抱き締めた。美佐江に関わってほしくないという親心。でも、何か罪に問われているわけではない美佐江に対してするには、決めつけが強い行動だった。
傷付いたように見える美佐江。美佐江には悪の定義がないのだから、寅子の反応は意味がわからず、ショックだったに違いない。ただ、賢い美佐江のこと。そういう表情をすることで、寅子を惑わすことができるという意図があった可能性も大いにある。
美佐江についての問題はやや宙ぶらりんのままで幕引きとなった。正義とか悪のない虚無の空間にいる美佐江の心が、癒やされる場面が描かれるといいのだけれど。