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裁判所の狭く暗い廊下がバージンロードのように

連続テレビ小説『虎に翼』第19週
連続テレビ小説『虎に翼』©NHK

 この言葉を受けて、友情結婚すると聞いて、最初は苦言を呈した高瀬(望月歩)と小野(堺小春)の結婚にも、「好きにするといい」と寅子。きっと、優三と形ばかりの結婚をしたことで優三に対し負い目を感じた過去や、子どもを持ち仕事から逃げ出した出来事なんかが過っての苦言だったのだろう。割り切ってはじめたものでも、思うようにはいかないよ、と。

 でも、結局寅子も次第に優三を愛し、ずっと優三の大きな愛に守られてきた。いろいろあったけど、収まるところに収まった。手紙を読んだことで改めて実感し、自分の発言を撤回したいと思ったのだろう。

 そして、大雨で帰れなくなった本庁勤務の日。航一と2人きりになった寅子は、自分は優三を愛していて、これからも愛し続けたいことを唐突に告白する。あまりにも急でちょっと面食らうけれど、航一は特に驚いた風もなく、このままでいましょう、とまるっと引き受ける。意志が通じ合っている2人。

 ところが、雨が止んだ帰り道、ひょんなことから手を取り合うことになった2人は、「永遠ではない、不真面目でだらしのない愛」を誓う。きっちりしていることが板についていただけに、雨で濡れた床で滑って転ぶという日常から逸脱した行為が「永遠ではない=不真面目な愛」という言葉を引き出したかのよう。

 ぎこちないキスを交わし、腕を組んで歩いていく。裁判所の狭く暗い廊下が、一瞬だけバージンロードになったみたいだった。

(文・あまのさき)

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