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多岐川(滝藤賢一)の訃報

連続テレビ小説『虎に翼』第24週
連続テレビ小説『虎に翼』©NHK

 薫は時代の風に当てられて学生運動に没頭していたというよりは、そこに自分にとっての正義を見出していたように感じられる。そんな人が、母親の偽りを知らされたショックはいかばかりだっただろう。

 しかし、香子が歩み寄ることで和解。「薫の前で崔香淑を取り戻してみたい」と語った。これを聞いていた多岐川は、布団のなかで優しく微笑み「愛だなぁ」と呟くのだった。

 このとき、家裁は少年法改正の問題に直面していた。安田講堂の一件も関連し、少年たちの犯罪が増えていることを危惧した法務大臣が厳罰化を求めていたのだ。これに対する意見書の作成のため、多岐川のもとに寅子、稲垣(松川尚瑠輝)、小橋(名村辰)が集まっていた。

 そして、厳罰を課して終わりではなく、更生のために愛を持って向き合うことを訴えた。床に伏し、弱々しさが目立っていた多岐川の、怒りに震えた涙ながらの訴えは迫力があった。少年たちのために粉骨砕身してきた男は、最期の最期まで愛に溢れて美しかった。

 ここでまとめた抗議文だが、多岐川が直接最高裁長官である桂場に渡すことは叶わなかった。多岐川の訃報をライアン(沢村一樹)が伝えに来ると、桂場の前に若かりし頃の多岐川の姿が。「頼んだからな、桂場」とギリギリまで顔を近づけ高笑いする。

 自分の生き方を見つけたのどか、模索することにした優未。そして薫の正義を見て、自分の生き方を取り戻した香子。それぞれの人生が、それぞれの軸で自分らしく展開していく。そして持ち越しとなった控訴された尊属殺人の行方と少年法の改正。寅子がこれまで向き合ってきたものにも、ひとつの答えが提示されていくのだろう。

(文・あまのさき)

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