尊属殺人の被告に心を寄せるよね(土居志央梨)
尊属殺の最高裁への上告を待つ美位子(石橋菜津美)に、よね(土居志央梨)は心を寄せる。父親からの暴行を、「おぞましいがありふれた悲劇だ」と表現する裏側には、自身の過去の経験が重なっているからだろう。そのうえで、よねは司法の場から世の中を少しだけでもよくするという志を忘れていない。
世間から「可哀想」と思われがちな自分から脱却すべく司法試験を受けたという涼子(桜井ユキ)の話を聞いて、よねが美位子にかけた言葉も印象的だった。よねたちのところに相談に来る依頼人のひどい話と比較して自分はましと思うなと前置きしたうえで、「世の中がクソなだけ」で美位子が「可哀想」なわけではない、とするよねの言葉のなんと温かいことか。
必要以上に自分を卑下せず、正しく世間を批判すること。よねや涼子たちのように、なにくそ、と世間と戦えない人もいる。そういうすべての人へ届いてほしいと思った。
よねの思いに感化された航一(岡田将生は)、尊属殺の事件について取り扱ってもらえるよう桂場に直談判する。時期尚早であるとする桂場に、珍しく声を荒げ「人権蹂躙から目をそらすことの何が司法の独立か!」と噛みついた。
興奮のあまり鼻血を出し、倒れてしまうところまで含めて航一らしい。なにか大きなことがあるわけではなくとも張り詰めた場面が連続していたなかで、桂場に膝枕される航一という画が微笑ましかった。