寅子「法律は舟のようなもの」
最終話、寅子亡き後の平成の世は、男女共同参画社会へ。好きなものがたくさんあって「何にだってなれる」最高の人生だと言った優未(川床明日香)は、自宅で着付け教室をやったり寄生虫の雑誌の編集をしたりと忙しくも充実していそう。
家族の反対を押し切って老人ホームで暮らしているらしい航一(岡田将生)は、まだまだ子供や孫たちを見ていたいと言う。新潟ではあんなに疲弊して、今は余生とまで言っていたのに。彼にこういう未来があってよかったとしみじみ思う。
優未は橋の上で、突然の解雇で困っている美雪に助言する。背後には、いまは亡き寅子の姿も。
優未が「お母さん」と表現した法律を、寅子は桂場(松山ケンイチ)に「舟のようなもの」と言った。尊厳や権利を守るための舟。すべての人が快適でいられるように、時折、修繕をしながら扱う舟。この作品の冒頭で、笹船が映っていたことを思い出す。ここに集約されていくとは、なんとも憎い演出だ。
この期に及んでまだ桂場は、ご婦人が法律を学ぶことも職にすることも反対だ、と口にする。だが、寅子の横浜家庭三番所長官就任のお祝いのために集まっていた同窓生の面々は、自分たちの選択を悔いている様子はない。法律に携わる職のみならず、女性が仕事をする環境は整っているとは言い難いし、不平等はなくなっていないけれど、「未来の誰かのためになるのは光栄」と力強く語る。