脚本家・吉田恵里香に感謝をこめて
かつて「雨垂れの一滴に過ぎない」と言われ、怒りを露わにしていた寅子の姿はもうない。それはきっと、ここまでがむしゃらにやってきた自分たちの世代のがんばりが、結果として未来に繋がっていくことを実感したからだろう。
そんな地獄ならば大歓迎だった。同時に、そこに完成はないからこそ、音羽たち次の世代に託してもいる。
はる(石田ゆり子)の「地獄を生きる覚悟はある?」で動き出した本作は、実際そこかしこに地獄があった。それは決してこの時代に限ったことではない。いまだってどこにでも地獄はある。だが、わたしたちには生きたい地獄を選ぶ権利があるし、そのなかに希望を見出し、育んでいくことができる。結果的にそれが、今日よりは少しいい未来に繋がっていくのだろう。
「どう? 地獄の道は?」と問う想像上のはるに、寅子は「最高です!」と笑顔で答えた。あの笑顔を目指して生きていきたいと思える締め括りだった。
最後に、主演を務めた伊藤沙莉さんをはじめ、素晴らしい演技で魅了してくれた俳優陣、そして当時と現在を地続きで考えられるような問題提起を多く投げかけてくれた脚本の吉田恵里香さんに心からのお礼を伝えたい。
(文・あまのさき)
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