女学部を卒業し、舞台は本科へ
では、互いに同情し合えばいいのか?というと、そういうことではない。
「弱音を吐いても何も解決しない」と言ったよねに、寅子は「むしろ弱音は吐くべき。解決しなくても受け入れられる」と説く。いま自分が何を感じ、何に苦しみ、何に怒っているのか。ありのままを表現し、誰かに伝えること。これこそ、抑圧されることの多かった女性にとって、もっとも必要なことかもしれない。
だから、寅子はよねにも、そのまま怒り続けていて、と言葉を贈る。突き詰めれば人は1人かもしれないけれど、自分を受け入れることで救われることがきっとある。
そしてこれはきっと、性別を超えたエールだとも思うのだ。例えば寅子が食卓で「一発で司法試験に受かる!」と言ったとき。もう何度も試験に落ち続けている優三(仲野太賀)は静かに頭を垂れ、あからさまに落ち込んで見せた。涼子の家では婿養子の父が、妻の寿子(筒井真理子)にまったく反論できていなかった。
女子部の生徒それぞれの苦しみにフォーカスされがちではあるが、寅子たちを取り巻く男性たちのなかにも、それぞれなりの苦しみがささやかに描かれている。「弱音を吐いてもいい」というのは、きっと彼らに向けられたメッセージでもあるはずだ。そして、寅子はきっと、老若男女問わず、そういった人たちの居場所となっていくのだろう。
次週から、舞台はいよいよ法学部へ。早くも岩田剛典演じる花岡悟の癖がだいぶ強そうで、寅子と彼のやりとりがどのようなものになるのか、期待が高まる。
(文・あまのさき)
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