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「上京してからのお前は男っぷりが下がっている」
轟の株が上がりっぱなし

連続テレビ小説『虎に翼』©NHK
連続テレビ小説虎に翼©NHK

そして印象的だったのが、寅子たちが学校終わりでよく通っている甘味処で梅子の息子・徹太に遭遇したとき。そのときはたまたま男子学生たちも一緒に来ていたのだが、徹太を見るなり、彼らは微動だにしない。なぜか? それは徹太が、彼らの通う明律大学よりも優秀な帝国大学に通う学生だったから。ものすごいヒエラルキー。

大庭の悪意しかないジョークにまったく表情を変えなかった轟も、徹太を前にしたときばかりは身を堅くしていた。花岡とは同郷で古くからの知り合いのようだが、性格がまったく違う轟。いわゆる優男な花岡に対して、轟は“THE 漢”という感じ。

花岡のように女性に特別優しいわけではないけれど、花岡が他の男子学生の前で女性を下に見るような発言をしたのを聞けば「撤回しろ!」と叫ぶし、ハイキングに行けば涼子の付き人・玉(羽瀬川なぎ)や梅子の息子が持っていた荷物を代わりに持ってくれる。

女性だからとか下心とかはきっと1mmもなくて、自分よりも物理的に弱い存在だから、という思考回路なんじゃないか。最初は堅物そうで少し構えてしまったけれど、芯が通った人なのかもしれない。

花岡の“歪さ”の理由が明らかになったのは、ハイキングで寅子と口論になったのがきっかけ。これまで寅子たちに優しくしていたのは「君たちを特別だと尊重していたから」であって、根本には明らかなホモソーシャルがあったことがわかる言葉が次々に飛び出してきた。あれ、君の本心はやっぱりこっちだったのか……?

言葉よりも先に手が出てしまった寅子によって花岡は怪我をし、数日間の入院生活を余儀なくされる。退院に付き添ってくれていた轟に、「やはり男女が共に学ぶのは無理があった」と言い、寅子たちのことを悪く言う。それを聞いた轟は、骨折し、頭まで怪我していた花岡を「愚か者!」とビンタした。

思ってもないことを宣うな、俺の前では虚勢を張るな、と続ける轟は、自分の頭で俯瞰的に物事を考え、いろんなものが見えていた。だからこそ、「俺が男らしさだと思っていたものは、男とは無縁」という言葉も出たのだろう。

轟が考えていた強さと優しさを兼ね備えた“男らしさ”は、寅子たち女子部の生徒たちも持っていた。轟は彼女たちと過ごす時間のなかで、早々にそのことに気づいたのだ。自分の核を占めていただろう価値観ががらりと変わったはずなのに、それを否定せず受け入れる。

轟の株がぐんぐん上がる。そして、「上京してからのお前は男っぷりが下がっている」と花岡の目を覚まさせるような言葉を贈る。これもまた、強く、優しいからこそできることではないか。

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