寅子たちが生きる日々と現在の状況は同じ線上にある
いつぞや涼子が言った「わたくしが優秀なのはわたくしが努力したからなのに、誰もそのことを認めてくれない」という言葉を思い出す。
華族の生まれだから恵まれている、そんな風に多くの羨望と妬みにさらされてきたであろう涼子の人生。きっと弁護士になれたとて、そこから逃れることはできなかっただろうけれど、高等試験合格という事実が彼女にとって何かの証になったかもしれないのに。試験を2週間後に控え、涼子の道は閉ざされてしまった。
さらに、試験当日、梅子もまた夫が若い女と再婚をするということで離縁を言い渡され、幼い三男を連れて家を出ることに。戦争という大きなものに翻弄された留学生の崔、家柄によって選択肢を奪われてしまった涼子、婚姻制度の男女の不平等に振り回された梅子は試験を受けることすらできなくなってしまう。
道半ばで諦めなければならなかった仲間の思い、自分たちのあとに続く後輩たちの未来を背負って臨んだ筆記試験を、寅子もよねも中山も無事にパスすることができた。
次に控える口述試験を前に、久保田と話す寅子。久保田は昨年の口述試験も自信があったと言う。それを聞いていた桂場(松山ケンイチ)は、「同じ成績の男と女がいれば男をとる」と言い捨てた。
まただ。また、女性であるというだけで、背負うものが増える。同じ試験を受けているにもかかわらず、男性と同じ成績ではダメ。彼らを凌駕する成績を求められる。理不尽だ。
だけど、ほんの数年前にもどこぞの大学入試で女性だけが一律減点されるということがあった。改めて寅子たちが生きる日々と、いまわたしたちが生きる日々が同じ線上にあることを実感する。彼女たちが戦って勝ち得てきてくれた多くのことがたしかにある。でも、それでも足りない。わたしたちも、まだまだ訴えていく必要があるのだということ。