現代を生きる人たちにも深く響く久保田の悲痛な叫び
寅子が優三との子どもを授かったことが発覚した矢先、先輩の久保田(小林涼子)から、弁護士を辞め鳥取へ移り住むことになったと聞かされる。「主婦としても、弁護士としても、満点を求められる」という久保田の悲痛な叫びは、現代を生きる人たちにも深く響いたことだろう。この頃から、今日に至るまでずっと、わたしたちは同じような悩みの中にいる。
しかし、寅子は久保田に同情するのではなく、言葉にせずとも「仲間の想いを背負っているのに」と責めるような姿勢を見せる。そして「もうわたししかいないんだ」と、久保田が持っていた雑誌の連載を引き受けたり、母校の講演会に登壇することを快諾したり、忙しい自分をさらに追い込んでいった。
よね(土居志央梨)はそんな寅子を止めようとするが、聞く耳を持たない。「わたししかいない」という言葉を、いまだ高等試験に合格できていないよねはどう聞いただろう。自分の不甲斐なさを感じただろうか。何にしても、気が立っているとはいえ、寅子は少し配慮が足らないと感じてしまった。そこまでいっぱいいっぱいになってしまうなら、一度立ち止まったほうがいい。