「寅子のありのままを愛する」優三に魅了される
穂高への結婚報告からずっと、優三が寅子へ向ける笑顔は格別に甘い。本当に、とろけそうな笑顔だ。
そしてもちろん笑顔だけでなく、言葉や行動からも優三の寅子への愛情は溢れ出る。先述した依頼人に欺かれてしまったときだって、河原で隠れてチキンを食べ、「ずっと正しいばかりでは疲れてしまう」と、寅子をプレッシャーから解き放とうとしてくれた。
これがきっかけで寅子は優三に恋をし、妊娠に至る。だが、妊娠がわかってもバリバリ働き続ける寅子に「もう寝ないと」と言いこそすれ、優三は一貫して「したいようにすればいい」という姿勢を貫いた。
そんな優三に、赤紙が届く。最後に2人だけで過ごす時間がほしいと言った優三に、寅子は「優三さんの優しさにつけ込んで」と謝罪をしたのだが、優三はそれを否定する。「寅ちゃんにできるのは、好きに生きること」と言い、「働いても、母でいてもいい」と続けた。
このときもやはり優三の顔はとことん優しい。
弁護士になりたいのならばそれを応援するし、辞めても責めたりしない、違うなにかを見つけたならそれをすればいい。とにかく、寅子が寅子としてありのままでいることを愛しているのだ。
妊娠をしたら子育てに専念するのが務めであるように言った穂高や雲野らとは真逆で、これをしっかりと伝えられる優三は、改めて寅子にとって最良のパートナーだと感じた。そしてここまで思える相手を見つけられた優三もまた、大いに幸せだったことだろう。
大事な局面ではお腹を壊し、どこか抜けているところもある愛情深い優三に魅了されていた視聴者も多い。地獄を生きる寅子の日々は息が詰まる出来事も多かったけれど、優三との掛け合いがいい息抜きになっていた。それもひとえに、仲野太賀という俳優が様々な表情で優三というキャラクターを生きていたからだろう。
出征する間際まで、寅子と変顔をしてじゃれ合う。笑いたいのに、涙が溢れて止まらない。「帰ってくるから」という約束が果たされてほしい、と思わずにはいられなかった。
(文・あまのさき)
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