優三が寅子に伝えた願い
優三の死を知っても、寅子は泣いて取り乱すことはしなかった。ただじっと耐えるみたいに、淡々と生きることを続けた。これに待ったをかけたのははる(石田ゆり子)だ。直言のカメラを売ったお金を渡し、心が折れる前に立ち止まりなさい、と進言する。実は自分も花江も、内緒で贅沢をして乗り越えてきたのだから、と。
もらったお金で屋台へ行き、焼き鳥とお酒を買う寅子だったが、生前「美味しいものは一緒に」と笑い合った優三の顔が浮かんでしまって食べられない。生活のそこここに、まだ優三が生きている。食べ物に手を付けず店を後にした寅子だったが、店主が追いかけてきて、焼き鳥を持たせてくれた。街の中はまだまだ荒廃しているけれど、ここには人の優しさがあるのだと気付かされる。
焼き鳥は、新聞に包まれていた。そこに書かれていた新しい憲法を読み、またも優三を思い出す寅子。そこに書かれていたのは、優三が寅子に伝えた「寅ちゃんが好きに生きること」「後悔せず心から人生をやりきる」という願いに通じるものだった。