いま一度、法曹の世界へ
社会は変わりつつある。寅子が目指した男女平等の社会が、優三が願った後悔しない人生を生きられる時代がやってこようとしている。その事実に力が湧いてくると同時に、優三のような素晴らしい人物を欠いてしまった代償の大きさを感じた。
はるの計らいによる息抜きを経て寅子がたどり着いたのは、自分の気持ちを押し殺し、大黒柱になろうとしていた直明を大学へ行かせることだった。二十歳だからもう大人だと言っていた直明が、「勉強してもいいの?」と涙を流す。
これまで家族のために我慢を強いられていた直明を演じる三山凌輝のまっすぐな瞳が、安堵に揺れたように見えた。短いやりとりではあったが、非常に印象に残るシーンだった。
自らが大黒柱になるという寅子の選択は、自分自身がいま一度法曹の世界でやりきりたいとの思いに支えられているのだろう。と同時に、それは、子どもの頃から勉強が好きで役人になりたいといっていた直明の夢を叶えるためでもある。
寅子は、家族の夢を応援するために、自分のできることをやると決めたのだ。これはそのまま、かつて直言が寅子にしてくれたことでもある。寅子のなかに優三と直言がたしかに生きているという証が感じられた、熱い決断だった。
(文・あまのさき)
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