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水季(古川琴音)が理解できない…今後、見え方が変わるはず!

『海のはじまり』第1話より ©フジテレビ
『海のはじまり』第1話より ©フジテレビ

 正直、いちばん感情移入ができなかったのが水季だった。中絶同意書にサインを求めて、子どもを堕したと伝える。そして、一方的に「夏くんより好きな人できちゃった」と別れを告げたのに(この好きな人というのは、娘のことを指しているのだと思うが…)、生まれた娘に夏のことを「パパ」だと言い、夏の家までの行き方を教え込んでいたらしい。その結果、娘は急に家までやってきて、「夏くんのパパ、始まらないの?」と言い出した。

 夏が、妊娠した瞬間に逃げるようなクズ男なら、隠れて産もうとする気持ちもわかる。しかし、夏はちゃんと向き合おうとしていた。水季の不安を他人ごとのように捉えるのではなく、ちゃんと自分ごととして受け止めていた。「面倒なことが嫌い」と言っていた夏に、「本当は産みたい」とは言えなかったのかもしれない。それでも、やっぱり伝える努力をしてもよかったような気がする。

 そして、夏に隠れて子どもを産む覚悟をしたのだとしたら、家までの道を教えこむのはどうかと思う。死期を悟って、ひとつでも多く娘が頼れる場所を残してあげたい…と考えたのなら、ちゃんと間に入って、頼れるかどうかの確認、準備をしておいてあげるべきだ。大学の同級生に、夏の状況を聞いていた可能性もあるけれど、7年間も会っていない昔の恋人に最愛の娘を託すのは、あまりにもリスキーすぎる。

 ただ、まだ第1話。キャラクター描写がうまい生方美久のことだから、水季の気持ちもしっかりと丁寧に描いていくはずだ。『silent』や『いちばんすきな花』(フジテレビ系、2023)でも、ヒール側にいた人物がどんどん愛おしく見えてきたように。回を重ねるごとに、水季の考えも理解できるようになっていくのだろう。

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